ふたつの贈りもの
きのうは日本からみえた恵泉女学園大学のT先生から柿をひとついただいた。
ことしも学生たちのフィールド・スタディのプログラムのなかに「バナナペーパーづくり」を組み入れるので、その打ち合わせにみえたのだ。
柿は、きょう、在住の友人ふたりを招き3人で分けあって食べた。ひとりは日本人、もうひとりはスマトラ出身のインドネシア人D。
ふたりには、このあいだ収穫したパッションフルーツの最後のひとつを割って添えた。
Dはアメリカに8年もいてグラフィックデザインの勉強をしていたけれど、いまは中国料理の修行中。
「なんで、デザインから料理にいっちゃったワケ?」
と尋ねると、モチベーションは同じ、と気の利いた返事がかえってきた。
将来はケータリング・ビジネスにつなげたいそうだ。顧客第1号としてぼくは名乗りをあげた。
柿ひとつをきっかけに、思いつくままの話題も尽きず4時間近くも3人でおしゃべりしていた。
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もうひとつの贈りものはオーストラリア人の女性リーンさんから。
彼女自身の作品だ。
ちいさな川をへだてて共鳴しあうふたつのオブジェがむかいあっている...その小品から呼び起こされるイメージに、別れの挨拶に訪ねてきてくれたリーンさんの心情がかさなった。
彼女がはじめてぼくの家を訪れたのは2年すこし前、共通の友人のアメリカ人Sさんに伴われ、彼女の制作した作品をたずさえてきた。
その後、夫のロンさんとふたりでウブッドに来るときにはよく立ち寄ってくれた。70代半ばのロンさんはじぶんでモーターバイクを組み立ててしまうくらい機械に強い。
工房の特製ミキサーが故障したときなど、かれに頼んで修理してもらったくらいだ。
そのロンさんはすでにバリを去り、リーンさんも今月20日に故郷へ帰る。
彼女が最近のメールで「バリはホリデーを楽しむには素敵な場所だけれど、住むにはかならずしもふさわしくなかった」と書いていた。
きのうは、彼女とふたりだけのランチの時間をウブッドのレストランで共にした。
彼女のおかげでぼくの作品と工房の活動がオーストラリアのペーパーアーティストたちに紹介され、来年クィーンズランドで開かれる展覧会に招待作家として招かれることになっている。
再会の日まで互いの健康を祈って、ぼくらは別れた。