満室 眠りの入口のドアを叩くと奥から咳払いが聞こえたので、再び闇の通路を手探りで歩いていた。 別のドアが手に触れ、戸板に耳をあてると微かに寝息がもれてくる。つぎのドアからは歯を軋(きし)る音が聞こえてきた。 今夜も眠りの入口はどれも塞がってい…
葉書 引出しの中からサラサラと音が聞こえるのを奇妙に思いあけてみると、消息の絶えた友人からの古い葉書がでてきた。 手にとると、インクの青い文字は床に滑り落ち、跳びはねながら外にとびだしていった。 夜道を追いかけているうちにとうとう海岸にでると…
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