2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ウィークエンド・レポート 

23日(月) 2か月近くうやむやにしていた照明具を、ウブッドの某ホテルに配達。 ロビーに飾るものだが、6年前につくったもののリメイク。 5年くらい前、このホテルに泊まった知人がたまたま写真に撮っておいてくれた。 ところがサイズが5cm大きすぎると、…

謎の「ド」

指がくっついてしまった…。 レッドジンジャーとツーショット。 今朝、工房で瞬間接着剤をつかっているとき、中指と薬指まで接着してしまった。しょっちゅうやっているのであまり気にしないけど、きょうはかなりベットリとくっついてしまい、無理やりはがすと…

見えない世界 2 バリで読む『遠野物語』6

電話の相手はさっきドゥクンのもとにやったスタッフだった。すこし興奮した早口で話す。「プンフニのせいだそうです」 プンフニ / punghuni とは、一般名詞では「住民」を表すのだが、いま起きているような文脈のなかでは「精霊」を意味している。 ある土地…

見えない世界 1 バリで読む『遠野物語』5

母方の親類が岩手県三陸海岸の周辺に散らばるように住んでいたせいで、こどもの頃にはすでに『遠野物語』に登場するいくつかの話に類するものは、伯母たちから聞かされて知っていた。 夏休みのあいだ、宮古や山田それに内陸部ではあるが盛岡など、転々として…

鎮魂の技術 バリで読む『遠野物語』4

『遠野物語』は文学である、と40年ぶりに読み返してはじめて気づいた。 もちろん、この本が日本の民俗学の誕生を印す重要な起点になったものであるとしても、本質的には文学である。 簡潔で入念なことばの選択、文体のうつくしさは読んでいて心地よい。佐々…

思い残し切符 2 バリで読む「遠野物語』 3

『遠野物語』第二三話は、こういう話だ。 「同じ人の二七日の逮夜(たいや)に、知音の者集まりて、夜更くるまで念仏を唱え立ち帰らんとする時、門口の石に腰掛けてあちらを向ける老女あり。そのうしろ付(つき)正しく亡くなりし人の通りなりき。これは数多…

思い残し切符 1 バリで読む「遠野物語』 2

この4月に亡くなった、作家・戯曲家の井上ひさしさんの数多くの作品のひとつに『イーハトーボの劇列車』がある。 井上作品のひとつのジャンルをかたちづくる「伝記劇」のいちばん最初の戯曲で、宮沢賢治が主人公。 「イーハトーボ / イーハトーヴ etc.」は…

風水師  バリで読む『遠野物語』 1

いま借りているこの土地に、まず工房を建てたのは2003年の暮れ、翌年の2月末にはささやかな家屋を建て終わっていた。 家が建つまでのほぼ2か月は、プリアタンにある借家からこのマスの工房まで、飼い犬のチェリーをシートにまたがらせ10分くらいの道のりを…

温かい気持 5 (続き) 閉じていく思い出のそのなかに 13

オリヴァー・サックスのいう、知的障害をもったひとびとのこころの「質」を想像するには、ぼくらの経験からは子どもの頃のこころのありかたを想起すればいいだろう。内田百間のいう、子供心のさらに奥にあるものについて思いを馳せてみればいい。 ことば以前…

温かい気持 5 閉じていく思い出のそのなかに 12

「温かい気持」は、『妻を帽子とまちがえた男』(オリヴァー・サックス著)の第四部「純真」のプロローグ冒頭にみつけたことばである。 オリヴァー・サックスは脳神経科医で、’91年に日本でも公開された映画『レナードの朝』のもとになった同名の本 (‘73刊)…

温かい気持 4 閉じていく思い出のそのなかに 11

内田百間の涙──。 とにかくよく泣くひとだ。ノラがひと晩帰らなかったその朝から、すでに泣きだしている。ノラの失踪3日目には、奥さんが配慮をきかせる。 「毎日私が泣いて淋しがるので、家内がだれかに代る代る来て貰つて一緒に御飯を食べる事にしてはど…

歩く

仕事をしない日を迎えた朝の目覚めは穏やかだ。 穏やかな気分だからきょうは散歩をしようと決めた。 雨が降っていたので、やんでからそうしようと決めた。 だから午後も遅くなってから出かけた。 [ ギャラリーに立ち寄る。 ] 歩道にポッカリと穴があいていた…

明日は休む!

「日曜返上」を書いたのが6月23日で、曜日に関係なく毎日を過ごすとどうなるだろう? じぶんのからだにどんな変化が起きるだろう? などと口走ったが、いやはや疲れた〜! たしかに連続した曜日感覚はほとんどなくなる。それでも、ひととの約束などがあるか…

温かい気持 3 閉じていく思い出のそのなかに 10

ノラが一夜明けても姿を現さない、それに気づくと同時に内田百鬼園は朝の布団の中で滂沱の涙を流した。 そして、その突然の予期せぬ涙に、「その時ノラは死んだのだらう。遠隔交感(テレパシイ)の現象を信ずるも信じないもない。ノラが私の枕辺にお別れに来…

温かい気持 2  閉じていく思い出のそのなかに 9

百鬼園先生の『ノラや』を最初に読んだのは、5年くらい前だった。 今回再読したのは、といっても数か月前だが、この3月に飼い犬のチェリーを喪ったあと、かなしみの感情はおさまらず、ひと月を経てふた月を過ぎても「喪失感」はいつでもぼくのこころを占め…

温かい気持 1  閉じていく思い出のそのなかに 8

黒澤明監督の遺作となった『まあだだよ』(‘93年)は、随筆家・内田百間(門がまえに月)をモデルとして、師弟の絆を描いた「アットホーム」な映画だった。 だいぶ前に観た映画なので、細部にわたって記憶しているわけではないが、全体の印象としては起伏の…