2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

昨日のつづき、のようなもの

Tjandra さんのコメントにあるクスルパン/ kesurupan(憑衣)はインドネシア語であり、バリ語のクラウハンとほぼ同じ意味でつかわれているようだ。 インドネシアでは毎年5月になると、高校に始まり中学校・小学校の生徒までいっせいに進級・卒業の試験が行わ…

憑衣される子どもたち

「ブスンビウ郡プチャッサリ村およびその付近の住民と父兄は、ブスンビウ第五公立中学校の授業活動が1か月ほど前から順調に行われていないことを懸念している。理由は、11月2日の満月の日以来ほぼ連日、この学校では5人前後の生徒がクラウハン(トラン…

新聞に載っていたDGのこと

10月初旬に二度激しい雨が降って以来、雨らしい雨がないまま乾いた雨季の季節がつづいている。乾季に逆戻りしたように、朝晩は涼しい。今朝も、起きがけにジャンパーを羽織った。 いつものように新聞をひろげ、さっと見出しを追う。気候変動の記事も準特集扱…

Back to the Future 後編

スタッフの生まれ変わりの話を聞きながら、ンガルアンのやりとりのなかでぼくの興味をひいたのは、かれらが「誰の」生まれ変わりだったかということよりも、話のなかにしきりにでてくる「バヤール ウタン / bayar utang」という表現だった。直訳すれば「負債…

Back to the Future 前編

先月、今月とたてつづけに3人のスタッフがこどもをもうけた。今月9日に生まれたBaの次女はひと月の早産だったので、しばらく哺育器にいれられていたが、誕生6日後には無事に両親とともに家に迎えられた。まずは、めでたしである。 これで既婚者5人のスタ…

もの食うぼくら バビ・グリンの巻 最終回

「餅は乞食に焼かせよ、魚は殿様に焼かせよ」ということわざがあるが、「豚はバリニーズに焼かせよ」とつけ加えたらカンペキだ。豚一頭を、焦げ目もつけず、内部までしっかりと熱を通して焼きあげるテクニックはたいしたものだ、と思う。 ご覧のように「装置…

もの食うぼくら バビ・グリンの巻 5

話は、ブンブゥ / 調味料に移る。移りたいのだが、メンドくさくなってきた。最近はいろいろなことがメンドくさいと感じるようになってきた。以前は、あまりこういう傾向はなかったのだが、いまは「楽をしたい」という思いが強くなっている。そのうちに「楽に…

もの食うぼくら バビ・グリンの巻 4

はじめにサンバル / sambal とブンブゥ / bumbu の違いを説明しておこう。前者は日本流にいえば「タレ」であり、後者は「調味料」となる。サンバルの材料は、ニンニク、チャベ(緑トウガラシ)、ロンボク(アカトウガラシ)、バワン・メラ(アカタマネギ)な…

もの食うぼくら バビ・グリンの巻 3

‘95年に、日本をしばらく離れようと決め、それではどこへ行くかと考えていたとき、「バリ」は第一候補であった。 世界地図をひろげ、まず南北アメリカ大陸を手始めに、消去法でヨーロッパの国々がフッと消えアフリカ大陸がポッと消えていくうちに、自ずと残…

もの食うぼくら バビ・グリンの巻 2

バビ・グリンは「男の料理」である。もっと正確に言えば「男たちの料理」だ。豚一頭を扱うのだから、ひとりでできるわけもない。体力が必要だから、という理由をおいて、なぜ男たちの料理なのかとあらためて考えてみる。 まず、この料理は儀礼につきものの特…

もの食うぼくら バビ・グリンの巻 1

最近では、とみに肉を食べなくなってきている。メインは野菜で、じぶんで調理するときには、軽く茹でて塩・コショウかマヨネーズを使うぐらいで十分だと思っている。そして大量の果物をとっている。まるで修行僧のようだ。修行僧と異なるのは、ぼくには戒律…

余滴・ニワトリがサンバルくわえて...

獣医が話していたように、彼女が飼っていた鳥を放ったのちの「後日談」は、たしかにメスのランには一時期あてはまった。籠を飛び立ってからも、しばらくは家のまわりをうろついていた。しかし、庭には降りてこようとはしなかった。 Mは早くから気づいていた…

完結・ニワトリがサンバルくわえて...

ティティランという山鳩の一種である小柄な鳥は、たしかにバリでは「特別な鳥」として扱われている。有カースト者のなかでも、いわゆる王族にあたる人々の火葬の際に、ティティランの番(つがい)が空に放たれる。死者の魂が天上に昇るその道案内の役割でも…

続々・ニワトリがサンバルくわえて...

バリの志村喬老人を家の中に案内しながら、ぼくはガルーダを思い出していた。鳥は飼わない、これはぼくの原則なのだ、だれがなんと言おうとゼッタイ飼わない、と再度の誓いをたてていた。野にあるものは、野に返せ、なのだから。 テーブルを挟んで差し向かい…

続・ニワトリがサンバルくわえて…

もともと、籠に飼われている鳥を見ると違和感がフツフツとこころのなかにわいてくるのが常であった。少しきつい言い方をすれば、文字通り、飼い殺しだと感じていた。趣味と称して、鳥のいのちを歪めているようにぼくの目には映る。だから、鳥を飼っている友…

ニワトリがサンバルくわえて…

むかし、父から忠告をうけたことがある。 ほうほうの態で高校を卒業し、辛うじて大学に進んだころのことだ。 「どこから見ても、お前は鴨がネギをしょって歩いているようにしか見えないのだから、外に出たときにはくれぐれも注意せよ」 どう反応していいのか…

マニュアルのない社会

いまバリは電力事情が悪化していて、しばらく前から「計画停電」なるものが実施されている。日替わりで一定の地域が午後6時からほぼ3、4時間電力供給をストップされる。この日替わりメニューは10日から2週間のサイクルで最初にもどる。 終わることを知ら…

D通りのイタリア人 

バリに移り住むまえの ’95年初頭、ウブッドでぼくは2か月の長期滞在をしていた。サッカーグラウンドの脇をとおる道沿いにあった、小さなロスメンに宿をとった。 そこで出会ったのがイタリア人のSだった。かれがこの宿をほとんどじぶんの住まいであるかのよ…

森の変容 2

Bさんを誘ってモンキーフォレストを訪ねた。かれの気がすすまないのは承知しているが、どうしても現場に身をおいて聞いてみたいことがいくつかあったからだ。「現場」といっても、もちろん駐車場建設現場ではない。繊細なかれの神経を逆撫でするような所で話…

汝が名、ひと問はば...

初対面のひとの名前は聞いたはしから忘れてしまうトシになってしまったが、花の名前もしかり。むかしから知っている名前はともかく、新顔となるとかなりあぶない。 花を買う。殊勝にも、いちおう育てかたや花の名前を店のひとに尋ねてみる。 「テロスマ・コ…

森の変容 1

10月中旬から晴天がつづいている。すでに雨季に入っているはずなのに、雨は一滴も降らない。先日、バトゥールで植えた苗木はどうなっているだろうと気になってくる。年を追うごとに顕著になってくる異常気象だが、今年は乾季を長びかせ旱魃をもたらすのだろ…

月とトランス

今夜は満月だ。 最近読んだ小説『終(つい)の住処』(磯崎憲一郎)に「空を見るといつでも満月がかかっている」というニュアンスの一節があった。来る夜も来る夜も、見上げる空には満月がのぞいている、というのだ。村上春樹『1Q84』でも月は重要なメタ…

木を植えるひとたち、そして鳥

友人に誘われて、バリ北東部にあるバトゥール山のカルデラ地帯でおこなわれた植林活動に参加した。バトゥール山は標高1717mの活火山で、1917年と1926年に噴火している。内輪山周辺のカルデラ地帯は写真のように火山岩がゴロゴロと横たわり、緑の少ない乾きき…