2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

バリに生まれた「不幸」最終回 Beng Beng のゆくえ

──日本人は、犬と話ができるの !? ナルセのところで働いているニョマンがそう言ってたヨ、と知り合いのバリ人が教えてくれた。 12年前のことで、当時、バリではじめて犬を飼った頃だ。 この犬、プートラのことは以前にも書いたが、なかなかガンコなオス犬で…

バリに生まれた「不幸」6 朔太郎の犬

萩原朔太郎は詩のなかで、たびたびじぶんを「犬」に投影している。 この見もしらぬ犬が私のあとをついてくる、 みすぼらしい、後足でびつこをひいてゐる不具(かたわ) の犬のかげだ。………(略)とほく、ながく、かなしげにおびえながら、 さびしい空の月に向か…

バリに生まれた「不幸」5 モンゴルでも...

犬の「糞食」についてちょっと調べていて、ああ、そういえばそうだったと思い出したのが、モンゴルの遊牧者たちがかれらの飼っている犬に、人糞を餌として与える話だ。 あの、移動式住居のゲルに住むひとびとの排泄したものを食べさせることによって、ゲル成…

バリに生まれた「不幸」4 知らなかった... 

70年も前の「バリ島の山あいの貧しい農民の共同体」で飼われていた犬だからこそ、かわいそうに人糞を餌にしていたのだろう、ぼくは『バリ島人の性格』に載っていた1枚の写真を見てそう思っていた。 だから、丁稚のダルビッシュがつい最近話してくれた「パセ…

バリに生まれた「不幸」3 バユン・グデという土地

前々回に紹介したベイトソンとミードの『バリ島人の性格』は、1936年から39年にかけてのフィールドワークにもとづいて書かれたものだ。 写真のなかで「ウンチ」を犬に食べられている幼児は、イ・スプッという名で、生後276日の男児と写真解説にはある。 イ・…

バリに生まれた「不幸」 2 『チベットの七年』から

ハインリヒ・ハラーの『チベットの七年』には、ハラーとかれの相棒のアウフシュナイターにつき従って厳しい「旅」をつづけた犬が登場する。 「かわいそうなのは、私たちの犬であった。飢え死にしそうなのに、けなげにも私たちと歩調を合わせて歩いた。犬の唯…

バリに生まれた「不幸」 1 糞を食べる

丁稚のダルビッシュからおもしろい話を聞いた。 「昔々、神さまが粘度をこねまわして人間の塑像をつくったのだそうな。 神さまは、この塑像の前にお座りになり瞑想され、塑像に生命を吹きこまれようとされた。 ところが、『ワンワン,ワンワン──』 そこへ一…

日曜返上

「再編への途はけわしい」と題して、番外編もふくめれば7回にわたって書いてきて、じつは途中で気づいたのが、別段、「再編」という事態であろうがなかろうが、仕事を中心にした時間の流れというのは「けわしい」のが当たり前ではないか、ということ。 なに…

足を踏まれる  閉じていく思い出のそのなかに 5

動物にこころがあるのは自明のことで、身近に犬やネコと暮らしていれば、そしてよく観察していれば、かれらが時として見せる「人間的な」姿に驚くのはしょっちゅうである。 擬人化して観察しているわけではない。 喜怒哀楽、好悪の感情、いたわり、嫉妬、ウ…

迷い  閉じていく思い出のそのなかに 4

夜中になると痛みに襲われる状態が頻繁になったあるとき、鎮痛薬の効果がなかなかあらわれず、チェリーはぼくのベッドの脇でのたうち回りだした。 からだをしっかりと押さえながら抱いてあげるのだが、苦しみはつづいている。もう手の打ちようはないのかとや…

スキンシップ  閉じていく思い出のそのなかに 3

チェリーが発病し、さらに症状が悪化、やがて最期を迎えるまでおおよそ5か月が経過した。 昨年12月の半ば過ぎには、後ろ肢が両方とも動かせなくなりぼくと丁稚のダルビッシュが交替で、後ろ肢をもちあげて移動させていた。 チェリーも心得たもので、ぼくら…

再編への途はけわしい 5 復帰したアジ

インドネシアの学校では、今週から年度替わりの休暇が約1か月つづく。 先週末、お手伝いの“夏目さん”が帰り際、ぼくに聞いてきた。「子どもたちが働きたがっているけど、連れてきてもいいですか」 “子どもたち” というのは、彼女の長男と応援隊で来ているお…

番犬の役割  閉じていく思い出のそのなかに 2

2004年、この土地に簡素な家を建て住むようになった頃、防犯が少し気になった。 メインストリートからわずかに離れた、田んぼの中の開けっぴろげの家構えで、当時はまだ塀をめぐらせる余裕もなかったので、どこからでも入ってこられるありさまだった。 実際…

再編への途はけわしい また番外編

トラ刈り庭師のグンはトンズラするわ、工房スタッフは見つからないわ、しかし仕事は相変わらず忙しいところへ、臨時で助っ人にきている夏目さんのお姉さんが前触れもなく、ひとりのおじさんを連れてきた。「働きたいんですってェ」 とお姉さんはいう。 “です…

再編への途はけわしい 番外編

工房のスタッフとしてどうか、と紹介されたひとのなかにはすでに年齢が30歳を過ぎているひともいた。 う〜ん、とためらってしまうのは、ひとつには、偏見かもしれないが「教育適用期限切れ」の感じがするからだ。固まってしまった脳機能といっては大いに失礼…

再編への途はけわしい 4 親子のきずな

ひと選びは慎重に、とことん慎重に、とじぶんに言い聞かせている。 それで信頼できるバリの知人に頼んで、すでに何人か紹介してもらった。 お願いしたひとのなかで、プトゥリさんはウブッドの北にある山の中で竹炭づくりを村興しの事業としてたちあげたくら…

再編への途はけわしい 3 求人活動はじまる

4月上旬から人を募っていた。 スタッフふたりだけでは、じょじょに忙しくなってきた仕事をこなしていくにはやはり無理があると考えたからだ。しかも7月には、かなり大切なプロジェクトが控えているし、秋口、さらに年末から大きな仕事が待っているので急遽…

追従しない犬  閉じていく思い出のそのなかに 1

今日は、日本からやってきている友人のSさんがぼくの家を訪ねてきた。 バッグを置くなり、チェリーの墓に線香をあげ祈ってくれた。その瞬間、チェリーがからだを左右にふるわせ尻尾をくるくると振って大喜びしている“イメージ”がとつぜん湧いた。目に見える…

再編への途はけわしい 2  からだは「ひとつ」

この2か月、工房の仕事は、それまでの「閑古鳥インフルエンザ」に感染したかのような境遇と比較すれば、それこそ猫の手も借りたいほどに多忙をきわめている。 こういうときにはいつでも、お手伝いの“夏目さん”のお姉さんに助っ人に来てもらい、下ごしらえの…

再編への途はけわしい 1 すがすがしくもあり...

3月25日付けのブログで工房再編成をめざすという話を書いたが、すでに2か月以上過ぎたのに再編いまだならずといった状況にある。 わずか2人のスタッフが常勤で毎日顔をだしている以外、残りの連中、といってもわずか4人だが、かれらは皆去っていった。…