もの食うぼくら バビ・グリンの巻 5

 話は、ブンブゥ / 調味料に移る。移りたいのだが、メンドくさくなってきた。最近はいろいろなことがメンドくさいと感じるようになってきた。以前は、あまりこういう傾向はなかったのだが、いまは「楽をしたい」という思いが強くなっている。そのうちに「楽になりたい」と思うようになるのだろうか。この差は、なかなか微妙だ。
 かんたんに済まそう。ブンブゥは、塩・砂糖もふくめ17種類(!)のスパイスがつかわれる。それらを細かく細かく刻んで、前々回の写真に見えるように空っぽになった腹腔につめこむのだ。以上。

 同時に、オレット(腸詰め)も腹腔に詰めこまれて蒸し焼きにされる。写真は、腸詰めの内容物になる内臓を細かく刻んでミンチにしている場面。
 バリ料理の特徴とも言えるのは、食材をとにかく細かく刻むことではないだろうか。日本の「おでん」のように具がゴロンゴロンと扱われているのは見たことがない。
 ちょっと思い出したおかしい話。いまウチのお手伝いさんはテキストで覚えた和食をつくってくれている。たまたま彼女が休みの日に、ぼくは味噌汁をじぶんでつくったのだが、メンドくさくなって豆腐をおおざっぱに切った。2cm角、長さが4cmぐらい。
 翌日、冷蔵庫にしまってあるこの味噌汁の残りを見たお手伝いさんは、「正しい豆腐のサイズはこうだったんだワ、いままでの私の切り方は違ってたのね」と思い込んでしまったのだろう。以来、ずっとウチでは豆腐がゴロンとお椀の中に横たわっている味噌汁がでてくる。「これ違うよ」と言うのもやはりメンドくさいので、そのままにしてある。

 腸詰め用の腸は小腸をつかう。これを表裏ひっくりかえしてよく洗浄する。左の写真がそれだ。写真中央やや下に、もう一頭の豚の小腸がおかれているが、中身をぬいてきれいにした後はこんな感じになってしまう。これでも10 m近くはあるか。
 この腸をひっくり返す方法がおもしろい。まず、大腸に接する径の太い部分をひろげ残りの部分を詰めこむようにして上下を返し、そこへ水道の水を注ぐ。すると、腸は水の勢いでヒュルヒュルともとのように伸びるのだ、もちろん、内側がこんどは外側になる。
 内側をひっくり返して外側にするのもうなずける。いくらきれいに洗ったように見えても、やはり内部にはまだ不純物が残るだろう、だからこちらを外側にしてさらに洗浄するわけだ。

 洗浄が終わったら、さっきのミンチを漏斗をつかって腸の中に注ぎ込む。なかなか手際のよい動きだ。
 オレットの味は、やや苦みがあって血の煮こごりを食べているような感じがする。感触の荒いパテといったおもむきで、このままで食べるよりもサンバルと混ぜさらに白いごはんと混ぜて食べるほうがおいしくなるだろう。パンに合うかどうかは自信がない。
 この下ごしらえが終わるまで、だいたい3時間強かかっている。そして、いよいよ豚の丸焼きのプロセスが始まる。
(つづく)