ウィークエンド・レポート
9月6日(月)
庭師のワヤンにクタパン(トロピカル・アーモンド)の木の先端部分を伐採してくれるように頼んでおいたのは先週だったけど、ようやくその気になったらしく、きょうは梯子をかついで仕事を始めるのを目にした。
伸び放題にしておくよりも、ある部分で木の先端を剪定すると下の枝が横ばいに伸び日陰をつくるのには最適なのだ。
ところが昼過ぎになっても、いっこうに木の様子に変化がないのに気づいて催促すると、遅ればせながら返事がかえってきた。
「蜂の巣があるから切れない」
どれどれどんな蜂の巣だと、クタパンの木の下から見上げると、ブーゲンビリアの枝がからんだ5mぐらいの高さのあたりにスズメバチの巣がたしかにあった。
写真のほぼ中央部、焦げ茶色のかたまりがスズメバチの巣だ。小児のあたまくらいある。
すでに直径が20 cmを超えている。
蜂がひっきりなしに出入りしている。
*
どういうわけか、ぼくは蜂に刺されやすい。
まだ東京にいた頃、ある日、新宿駅南口で友人と待ち合わせしていたのだが、先に到着していたかれと同時に互いの姿に気づき、ぼくは「やあ」と手をあげたその瞬間、飛んでいた蜂にプスリとやられてしまった。
工房でも、床のうえのゴミをつまみあげた瞬間ピリッと痛みがはしり、指先を見るとつまんでいたのはゴミではなく蜂だった。
ヒルガオ科の植物で「カーディナル・クリーパー」を垣にからませていた頃、その枯れ葉をとりはらっているときにも、やはり刺された。
夜、電気をつけようとスイッチに手を伸ばしたときにも刺されたことがある。
*
蜂の天敵をちょっと調べてみたが、熊というのはともかくどこにでもいる鳥、オニヤンマ、クモなどが蜂の成虫を捕獲するらしい。
あ、そうだったのかとあらためて納得がいった。
スズメバチの巣をみつけて以来、巣がどんどん大きくなりはしないかと毎日観察しているのだが、ブーゲンビリアの木の周辺にいつでも数匹のヤンマが飛び交っているのを見ている。
鳥もスズメバチの巣の近くの枝にとまっているのを目にする。
かれらは蜂を狙って待ちかまえているのだ──と、いいのだけど。
9月7日(火)
このあいだ寸法が5cm大きすぎると突き返されたフロア・ライトの制作に、ようやく重い腰をあげる。
金網に紙を漉くのはひとつの方法としていろいろなワイヤをつかいけっこう多用してきたのだが、ここのホテルでつかった金網はいわゆる「チキン・ワイヤ」のなかでももっとも古典的なタイプで、6角形の蜂の巣(また蜂の巣!)状のもの。
いまどきどこを探しても見つからないのだが、奇跡的にブラバトゥのある建材屋にひっそりと売れ残りがいまでも置かれている。
もう錆だらけで、こんなモンよく金とって売れるものだとあきれるくらいのシロもの。
こんな錆付きでメーター100円もとられるのは納得いかないのだが...。
9月8日(水)
1か月余りかけてつくった紙を日本に送る準備ができた。
2m四方、4種の紙が5枚ずつで20枚だが、荷姿が長さ2m 10cm、ロールの直径が40cm、重さが15kgになった。
クライアントの要望で船便郵送となったのだが、あらかじめ郵便局に電話してサイズや重さを伝え料金をだしてもらっておいた。かなりの安さだった。
局員が車で荷を取りにきて1時間ぐらいしてから、担当者から電話があった。
「荷のサイズが大きすぎて扱えませ〜ん!」
土壇場でそういうことにならないように、こちらはあらかじめサイズと重さを正確に伝え、それに対して先方は料金まで伝えてきたはずなのにこういう結果である。
たぶん永遠に解決のつかないかれらの「課題」のひとつだろう──職業意識の欠如。
荷は、けっきょくレバランの休み明けまで郵便局に留めおかれるハメとあいなった。
9月9日(木)
重陽。陽数の「九」がかさなることから重陽というのだそうだ。五節句のひとつ。
明日10日の「イドゥル・フィトゥリ」の祭日からレバラン休暇がはじまる。一部では、すでに今日から休みに入っている。
知人のインドネシア人建築家から朝10時ごろ電話があった。
すでに昨夜のうちにジャカルタからバリに休暇に来ているという。
「30分ぐらいしたら友人といっしょにそちらに行くから」
いまどこにいるのか知らないが「30分」というのは怪しいものだ、せいぜい1時間後くらいだろうと踏んでいた。
甘かった...。
けっきょく、かれらが来たのは5時間後であった。
まちがいなく、永遠に解決のつかないかれらインドネシア人の「課題」のひとつだ──時間感覚の欠落。
9月10日(金)
昨日夕方から電話が不通になり、やがてネットもできなくなってしまった。
一日中雨が降りつづいていたせいか、とあきらめた。しかし、雨が理由で電話やネットというものは不通になるものなのだろうか?
しかし今朝は、さわやかな青空がひろがっていた。
だから、電話もネットもモンダイなくつかえた。
やれやれと思っていたら、昼過ぎから電話はふたたび不通に!
天気はいいのに...。
いずれにしてもこの長期休暇がおわるまでは、電話回線の復旧は無理だなと覚悟する。
ここでは永遠に解決のつかない「課題」──インフラ・フラストレーション。