晴れ間をぬって

 

 このところの雨つづきを「ノアの日々」と呼んでいた。


 休みなく降る雨、東の方角からつぎつぎとながれてくる黒い雨雲、雷鳴、道沿いの側溝を走る水は滝のような音をたてつづけている。
 まるで雨季末期の、いちばん天候が悪いころと同じだ。

 どういう因果関係があるのかわからないのだが、雨が降りつづけるとウチでは電話回線が不通になる。ネット回線もとぎれとぎれになり用をなさないときもある。
 ひょっとして電話線皮膜が破れ、漏水でもしているのだろうか?
 *その後、電話局に問い合わせたところ、ウチだけではなくこの付近一帯が不通なのだそうだ。回復の見込みも立っていないのだそうだ。フム...。


 日本にいる友人宛のメールに「青い空がみたい」と書いたのは今朝のことだった。


 数時間後、その青い空が雲間からのぞいた!



ハイビスカスの赤が映える。



胡蝶蘭の白も輝く。



ミミもひさしぶりの日なたぼっこ。


 だがぼくらは、日なたぼっこというわけにはいかない。


 晴れ間をぬって、大急ぎでやらなければならないことがある。

 雨漏り屋根の修繕だ。



“ダルビッシュ”(左)と “三角ごはん” のふたりが屋根にのぼり、瓦の下にビニールシートを敷く作業をはじめたところ。西の空はまだ雲に覆われている。


 母屋とそれにあとから付け足した庇との境が雨漏りのもっとも激しい箇所で、雨が漏るというより、家のなかで雨が降る──降りそそぐといったほうが正しいくらいだ。
 最悪のころは、バケツはもとより洗面器に鍋、ボウルなど受け皿につかえるものはなんでも並べていた。

 あの手この手と工夫しながら雨漏り箇所を少なくしてきてはいたが、この長雨のせいで雨漏りも当然ながら長期化するに及び、敷石の床が乾くひまがないのである。


 雨漏りの原因は多種多様だ。

 ウチの場合は先に書いたように継ぎ足し部分がいい加減だから。
 それだけではない。
 
 家屋の間際に大木が何本かあり、それらの木から落ちる枯れ葉や花などが屋根に積もってそこに雨水が溜まった挙げ句、瓦のすきまから漏れてくる箇所もある。

 だから今日は堆積物を掃除してから、屋根の真上にのしかかってくるアフリカン・チューリップ・ツリーの大枝をすべて伐採した。
 2、3か月くらい前にもいちど伐採しているが、かれらの旺盛な生長力はまたたくまに枝葉を繁らせる。



オレンジ色の花をつけているのがアフリカン・チューリップ・ツリー。枝を伐採したのは、その右にあるひょろりとした樹。三角ごはんの勇姿が見えるだろうか?
ぼくの知るかぎりでは、バリで最高にうつくしい樹形をもったアフリカン・チューリップ・ツリーはブドゥグルにあるハンダラ廣済堂ゴルフ場の正面にある樹だ。


 ほぼ1日かけて、雨漏り対策作業をこなした。

 3時過ぎには遠雷がとどろき、ふたたび空は雲に覆われたはじめた。