晴れ間をぬって 2
10月といえばもともとこんな天候だったんじゃないかな、と思い出させてくれるような好天がつづいている。
晴天に恵まれているうちにと、工房の屋根の修繕、あずまやの屋根の全面葺き替えを大工に頼んだところ、作業は3日前からはじまった。
稜線にそって左右から新しいワラの束をつけたして竹で押さえ、最後にワラのかみ合う部分に瓦をのせていく。
雨が降りだしたときはもちろん、ちょっとでも降りそうだと思えば、行水ができそうなくらいに大きなバケツを “雨漏り定点地” に並べる作業をこれからはしなくてもいいのだと思うと、バチ当たりの苦役から解放されたような気分になる。
あずまやはこのところ物置同然になっていて、犬やネコが気のむいたときにごろごろ寝る場所と決まっていた。ぼくが庭仕事をしている姿を、あの連中は涼しいあずまやに寝っころがりながら眺めているのだからいい気なもの。
ついこのあいだ久しぶりに中をのぞいてみたら、藁屋根が穴だらけになっているのにびっくり。
内側から見ればボロボロ...
作業2日目のきのうはいちばん若い大工(頭領の息子)が子どもを連れてやってきた。
「女房が留守なもんで..」
2歳になる男の子は、はじめのうちは照れくさがっていたけれどそのうちに歌ごえをあげて歩きまわったり、おじいちゃんの横に座りこんでかなづちを振りはじめている。
歩きまわるといっても父親のいる場所からかっきり半径3メートル以内といったぐあいで、見えない紐につながれているのかもしれない。
子ども連れで仕事ができるというのは、それはそれでたいしたものだと感心する。
以前、呼び出しのタクシーを頼んだとき、やってきた車のなかにぞろぞろとひとが乗っていたことがあった。
「ウチの家族を途中まで乗せていきたいけど、いいかな〜?」
いいかな〜、と聞かれてももう乗っちゃってるんだからしかたない。
ドライバーの奥さんやらおばあちゃんやちいさな子どもらに囲まれ後部座席にじっとすわっていたときのことを、この日の子連れ大工を眺めながら思い出した。
あずまやの改修作業も着々とすすんでいる。
花柄もようは大工の趣味──仕事には “遊び” がないとネ。瓦の色のまだら模様もかれらの好みか !? まさかこのままというわけではないだろう。
3日目のきょうは、朝のうちに瓦を並べていく作業はだいたい終わり4つの稜線部の処理。セメントをベースに塗り、そこへ軒先の隅鬼(と、日本ではいうらしい)を手始めに、掛瓦(これも日本の名称)を葺いていく──というよりはセメンを糊がわりにして貼りつけていくといったやりかただ。
頂上部から糸を引き、そのラインに沿ってまっ直ぐに掛瓦を置いていく。
それにしてもきょうは暑い! 炎天下の屋根葺き作業は、見ているだけでもこちらの汗をさそう。こうも暑いと勝手なもので、そろそろひと雨きてほしいものだと思うけど、いま降られても困るのである。