午後の過ごしかた


 賄いさんが姑の入院に付き添って休みをとったので、昼は、マスの通り沿いにあるワルンの「焼き魚定食」ですませた。



ある商売が流行りそうだとみると、たちまちのうちにあたり一帯、同じような店が軒を並べるのもバリの町並みの特色かもしれない。最近では、コンビニとイカン・バカール(焼き魚)のワルンが抜きん出て目につく。マスの大通りに沿って、この1年間にこの種のワルンが4、5軒も登場した。それ以前には、1軒もなかったのに。


 食後、すぐ近くにあるギャラリーを久しぶりにのぞいた。



現代アートだけを扱うギャラリーで、余裕のあるスペースは開放的だ。高湿度で強い太陽光の注ぐ風土では絵画保存はかなりむずかしそうだが、画家たちがもっぱら水溶性のアクリル絵の具をつかうのも、そうした気候にあわせてなのだろう。開け放たれた通路や窓から差しこむ光が陰影のある空間をつくり、自然光のなかで美術にふれるのも心地よい。


 これも好きだ。



「ボヘミアン・ラプソディ」(左)と「林檎アパート」


 これも、いい。



この数年、自転車もひとつの流行になっている。バリ人の友人の息子が中学にあがったとき、お祝いに自転車を買ってほしいとねだられたが、内心ほっとしたと言っていた。ふつうは、バイクを買ってくれというらしい。ほしい、と言われると、どうやら彼らは断れないようだ。だから、中学生がバイク通学するのが当たり前のように見られるのだろう。


 一番の好みは、これ。



この絵の前に立ったときには、ちょっと驚いた。まるで崩壊する福島原発のように見えた。構築物が溶解していくような造型、不気味な空気が空にむかって崩れながら流れていく背景が、そんな連想を呼んだのかもしれない。タイトルは「愛のささやき」──どこが? と突っ込みたくなるが、いや、そうなのかもしれないとも思う。


 首をひねったのが、これ。



1.5m くらいの2本の木にフェルト渦巻きを挟んだもの。意図はわかるが、素材はフェルトではないだろうと、余計なお世話とは思うもののあらゆる素材を考えてみた。ガラス、アルミニウム、ステンレス、紙、石 etc. とにかくフェルト以外のものならなんでも良し! と結論がでた。


 かわいそうなのが、これ。



庭石の上に置かれていた立体作品。タイトル表示は、雨や強い陽射しで消えてしまっている...。


 こっちのほうが、もっとかわいそうかもしれない。



常設展のレギュラー作品群。軒下に、なんの覆いもなく縛って置かれていた。あと1,2時間もすれば強烈な西日が射してくる場所だ。有名なドイツ人画家ピーター・ディトマーの作品も見える。



 炎天下をゆっくり歩きながら家にむかった。


 途中で、フットサルの競技場に立ち寄った。家の近くにそんなものがあるのも知らなかったが、たまたま同じバンジャールの世話人がバイクで走ってきたところに出くわし、目の前に競技場があるのを教えてくれたのだ。



競技場の西側には椰子の木立と見渡すかぎりにライステラスがひろがる。12日から始まるリーグ戦をめざして練習試合をしている4チームが、ふたつのコートを駆けまわっていた。昼間の時間のレンタル料は1時間2,000円ぐらいだが、夜間はその倍以上にはねあがるそうだ。


 家まであと5分というところで、ひと休みした。



カフェで冷たいライムジュースを喉に流し込んでいた。ギャラリーにいた時間もふくめると約2キロを3時間でもどってきたが、歩くのはここでは決して楽ではないといつも思う。