「これいただきね」と剽窃されてたから4月10日はコピー記念日

 4月10日の昼過ぎ、ウブッドから自宅に帰る途中、マスの大通りに面したちいさな店が目に入った。


 いつも通っている道で、どんな店がどこにあるかだいたい知っているつもりだが、その間口の狭いちっぽけな店には気がつかなかった。
 店に置かれている商品をなにげなく見ているうちに、どこかで見たような...


 コピー!


 ぼくのつくってきたもののミュータントがぞろりと顔をそろえている。
 まさに、突然変異体。
 似て非なるものが、生命力も輝きもなく、薄暗い店のなかにたたずんでいた。






 情けない仕事ぶりを眺めているうちに、2年前に忽然と辞めていったひとりの元スタッフの顔が浮かんできた。働いていた当時と変わらないフィニッシングの弱さがそのまま「作品」にあらわれていた。
 どんなに厳しく仕込んだところで「ダメなものはダメ」という、能力の限界をあらためて見る思いがした。






 このマスの大通りには、ガラス工芸作家・鳥毛清喜さんのコピーを売る店が大小並んでいる。それで、「コピー通り」と勝手に名づけていたが、いまやバナナペーパーと照明のコピー第1号が登場したというわけである。


 それにしても、目と鼻の先に住んでいて目と鼻の先で売り出す神経とは?


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 たまたま昨夜、鳥毛さんのお宅で夕飯をご馳走になった。
 

 つい最近、マスのコピー通りで最大のコピーガラス店 Focus をかまえる若いオーナーが鳥毛さんを訪ねてきたという。
 どうせ、新作か技法を盗み見しにきたのだろう。盗人たけだけしいというのか、その図々しさはわれわれの想像力を超える。


 鳥毛さんのオリジナルを圧倒的に凌駕する勢いで、いまやガラス製品はバリのあちこちで売られている。あたかも、ガラス製品はバリの地場産業のひとつであったかのように。


 バナナペーパーは、果たしてそれと同じ途をたどるのだろうか?


 それについてもまた、ぼくの想像力を超えてことばはない。