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シエスタ


9時がぶつぶつ言っているので耳を傾けると、どうしても2時の隣に並びたいと駄々をこねている。急きょ開かれた時計会議は、1日だけ9時の願いを叶えてあげることにした。


というわけで、今日は2時のあとにとつぜん9時がきて真っ暗になりますから、シエスタにはもってこいの午後なのです。





指導者的言語


ぐんこく主ぎの新気かいてん岩いに招かれた。


モぎぐんぷくに身をつつんだ老じンたちは、神みょうな顔つきで石を手にいり口の橋にならんでいる。てん長が十ぐんい安ふにせお割れてとうじょうすると、みんなではくしゅを下。


「こく力倍ぞう! 原ぱつはんざい! あ、まんざい! いや、バンザイ!」


てん長が裂けぶと、ロウ人たちはいっせいに十ぐんい安ふにつぶてを投下駄。





隙間風にさらされているような気配で目が覚めた。


顔を起こすと、獏が部屋の隅からこちらをうかがっているのに気づいた。


「あんまり夢みないんだね...」


獏の物欲しげな目は、わたしの顔をなでるようにちろちろ動いた。わたしは獏の視線を撥ねかえすつもりで寝返りをうった。


今夜は獏の夢でもみてやれと目をつむった。




東の果ての


ちいさな島を旅していた。


百年に千とひとつの夜を過ぎて辿りついた村では、人びとは美しい言葉をあやつり指先からは繊細な生活具を作りだし、つましく暮らしていた。


ところが、奇妙なことに人びとは長い布に触れるとくるくる巻かれ、長い縄を手にすればくるくる巻かれと、長いものにはくるくる、くるくる...。




 
二進法?


9時がなかなかもどってこないので、10時は不安になった。


8時からいきなり10時になるなんて想像もできなかった。こめかみが痛くなるほど考えたすえ、突然、名案がうかんだ。


「ええと、10から1を引けば9だから、ぼくから1を抜いておけばいいんだ!」


そして8時の最後の1秒が過ぎたとき、時計は零時をうった。